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Ys見てるかな? 一応残ってた超短編小説の中でいいのを選んでみたけど。

「それじゃあな、いつかまた会おう」
「じゃあ、また」
 そう言って高校生活最後の1年を過ごした親友と別れた。あいつは上京して東京の大学に行って、俺は地元の大学に行く。
 メルアドは知っているが、もう次に会うのなんて、いつ開かれるのか分からない同窓会だろう。
 その時まで、バイバイ。
 会えなくなるのは淋しいが、別れあってこその人生。出会いばかりの人生だったらいつかパンクしてしまう。それに大学ヘ行けば新しい出会いが待っている。別れを哀しんでばかりでは前に進めない。
 俺は校門を出てから振り向いて3年間学んできた学校にありがとうの気持ちを乗せて一礼した。なんだか熱いものが込み上げてきた。卒業式が終わった後にある卒業生を送る会で自分のフリートークでは泣かなかったのに。どんなことがあっても今日は泣かないと決めていたのに。笑って過ごそうって決めていたのに。
 それなのに……。
 止まらない涙。崩れそうな心。
 嫌なこともあったけれど、俺にとってみたら離れたくない、大切な場所だった。この高校に通えたことを誇りに思う。
 ここから始まった高校一年生。慣れてきて友達と馬鹿をして遊んだ2年生。受験が差し迫ってきた3年生。
 どれもいい思い出だ。忘れたくない。
 元の方向に戻って帰るための帰路を歩み出そうとしたときだった。ふいにそいつは現れた。「先輩、卒業おめでとうございます」
 振り返って見てみると、部活は一緒で会ったことは何度もあるが話したことはない部活の後輩の女子だった。名前は何て言ったっけ? 記憶にない。
 長い髪がこれほどまでか、というふうに似合っている姿は記憶によくある。それくらい綺麗な子だった。そんな子の名前を忘れてしまってるなんて。
 俺は頭を抱えて手を添えて、いかにも考えてます、という姿勢をとった。もちろん彼女から不審な目で見られる。
「?」首を傾げられた。
「待ってて、ちょっと」
 苦痛という表情でさらに深く思い出そうとする。始めの文字は確か「し」。そうそう「し」がついてた。そして「水」という文字があった。
 やっと原形が見えてきて少し嬉しくなった。思い出せれなかったらどうしようと思っていたがなんとかなりそうだ。
 し……水。清……水。……清水。そうそう清水さんだ。
「ええっと、なんだった清水さん?」
 やっと思い出した名前で彼女のことを呼ぶとポケーっとした態度だった。一瞬誰のことだか分からなかったみたいだった。
「えっと、岩清水ですけど……」
「……」
 空気が固まった。
 岩清水? 岩なんてついてたっけ? 記憶にない。そもそも名前なんてほとんど覚えてなかったので清水の部分だけでも合っていたのは奇跡かもしれない。
 しかし、名前を忘れていたというのはどんなことがあろうとも事実である。彼女は俯いて今にも泣きそうだ。泣くようなことではないと思うのだが。
「ええっと、ごめん」
 泣かれると俺が悪いみたいで、いや俺が事実悪いのだが、なんとなく女の子の涙には男は弱いものがある。泣きそうな彼女をほっとくわけにもいかず、おだてるのが精一杯できることだった。
「せ、先輩……」
「はいっ! 何々?」
 いきなり泣きそうな彼女に話し掛けられて驚いた。彼女はまだ泣きそうで俯いている。第一なんでそんなに泣きそうなのだ? 名前を忘れていただけなのに。ひどいと言ったらひどいが、泣くようなことではないだろう。
 彼女は涙で潤んだ目をこちらに向けて、
「先輩……あの……、第二ボタン、私にくれませんか?」
「へ?」
 あまりにも意外な言葉にびっくりしてしまった。てっきり名前を忘れていたことに非を打たれると思っていたのだが、まさかそんなことを言われるとは。
 一瞬第二ボタンがあるかどうか確認するために目線を下に向けて、ちゃんとついていたことを知るとほぉっと息をついた。せっかく欲しいって言ってるのになかったらこっちも嫌だし。
「ん~、いいよ。ちょっと待ってて」
 と言って無理矢理引きちぎろうとすると、彼女は、「わっ、ちょっと待って」と言ってハサミを渡してきた。細い糸も数本寄り添うと固くなるもので、さすがに固くて引きちぎれなかった。なので文明の利器に感謝して、落ちないようにボタンを左手で持ちつつボタンについていた糸を切った。
「はい」
 彼女の手に渡すと彼女は、ぱぁっと頬を赤く染めた。まるで好きな子に告白されて、恥じらいつつ付き合っていいよ、と言う瞬間の顔みたいに。
「ありがとうございます。一生大切にしますっ!」
 彼女は小さなボタンを両手で大切に持ってそう言った。別に高いものじゃないんだからそんなに大切そうに持たなくても、と思った。
「大切にしてくれるならうれしいよ」
「じゃあありがとうございます。先輩ご卒業おめでとうございました」
 彼女の目にはかなり力が入っていた。俺は思わず場違いな声で「ははは」と笑ってしまった。それほどまでに彼女は真剣で、俺は不真面目だった。
 彼女は「では」と言うと両手でボタンを持ってパタパタと走り去っていった。俺はその後ろ姿を見つめながら、彼女の手にある自分の制服から消えた第二ボタンを誇らしげに思った。
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(゜Д゜)Ys、ミテマスヨー

おおお、何か気を遣わせちまったか?わざわざ悪いな。
でもありがと!流石紳士!ww

良い話だな!
本当に超短編だから、読み切りっていうよりも寧ろ、なんての?
別に主人公の子メインの本編があって、
これはその過去番外編、みたいな感じの長さだけど、
軽く頭の中でネームにしてみて楽しかったよ!

もしかしたら、描くかもだぜ(≡ω≡)
その時は君に色々とアドバイス等頂けたら有難いな!
てか、まずお許し頂けると嬉しいです!


なんて事とは別に、これはよく思う事なんだけど、
そして某アニメでもヲタな主人公ちゃんが言ってたんだけど、
どうせなら第二ボタンよりも、そのまま告白しちゃって、
寧ろ本人をもらった方がよくないか?
ボタンもらいに行ってる時点で告白してるようなもんだし、と。

やっぱ、そういう事って言っちゃダメなのかな(・ω・)
萌えに求めるものは理想であってリアリティではないからな!
…あれ、何の話だ。

長々とすまんな!
本当にわざわざありがとうっ(^^*)
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プロフィール

白石歌香

Author:白石歌香
こんにちわ 大学1年生の 
白石歌香 っていいます。
もちろん半値です。中身は男ですー。

半値の由来は誕生石と自分の名前です。

杏エヴァン1位目指して奮闘中。

めいぽでは 現在ヨゼリア っていうキャラ使ってます。
でも未だにヨゼリアって名前に慣れないっていう。
呼ぶときはリカイナ、でお願いします。

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