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「桜の木」「カップル」「デート」

「見て見て、あの桜綺麗だねー」
 そう言って彼女ははしゃぎながら満開に咲く桜のうちの1本の木を指差した。この公園の辺り一面に桜は咲いていて指を指さなくても、どこにでも桜は咲いているが、彼女の指さした桜はこのあたりに咲いている桜の中でも特に綺麗だった。
 今の時刻はちょうどお昼前なので、その特に綺麗な桜の木の下には花見をしに来た人のレジャーシートが芝生の上に敷かれていた。そのレジャーシートの上には見た感じ老夫婦であろう、70代を超えていそうな夫婦が腰かけていた。そのレジャーシートは二人が座るにしてはやけにでかかった。
 その2人はいい席を撮れて満足しているのか楽しそうに会話をしている。きっとその場所にシートを敷いた2人は朝早くから場所取りをしていたんだろうな。でもなければ非常に運がよかったか。
「どこも開いてないね、お昼どうしよう……」
 今日の日のために彼女は、近所の市民公園にお花見をするだけなのに、ピクニックでも行くように(実際ピクニックに近いが)、手料理を振る舞ってお昼のお弁当を作ってきてくれたのだ。コンビニで買えばいいと俺は言ったが彼女は聞かなかった。でもコンビニにより手料理の方が百倍美味しい。
 なので、彼女の両手には大切そうにお弁当の入った鞄を持っている。お弁当は彼女が作ってきてくれると言ったので、俺が準備したのはレジャーシートくらいなもので彼女には悪いが、かなり楽であった。
 お弁当があってもレジャーシートを敷かなければ食べることが出来ない。俺と彼女がこの公園に来たのはお昼だったので、その時にはもういい場所は全部取られていた。
 空いているのは桜の花がついていない若い桜の木だけ。そこでもよかったのだが、せっかく彼女が作ってくれた最高のお弁当があるのに、場所が良くないといのは、何とも嫌だったので暗黙の了解で二人の口から綺麗でない桜の木の下にレジャーシートを広げるという会話はでない。
 さてどうしようか。満席のレジャーシートが開くのを待つか、綺麗に咲いていないところで我慢するか。
「そこの――」
 不意に背後から声をかけられた。俺と彼女は揃って振り向く。
「お嬢ちゃんと坊ちゃん、一緒に座らんかい?」
 そう言葉を掛けてくれたのは先ほど綺麗な桜の気に座っているのを二人が見つけた老夫婦のおじいさんのほう。おじいさんは手招きをするようにここに座りなさい、と目で語ってきた。おばあさんは、どーぞどーぞとでもいいたげにニコニコ微笑んでいる。
 老夫婦が広げているレジャーシートは2人にしてはでかすぎるくらい。俺と彼女が座っても問題ないくらいの大きさ。
 きっと昔、そのサイズの大きさのそれは、老夫婦とその子供達と一緒にお花見やピクニックをする時に使っていたのだろう。そうじゃないと説明のつかないくらいでかい。そして今は子供たちは巣立ってしまい使うのは二人だけになった――。
 考えると何となく泣けそうな話を作り出せる感じだったが、めんどくさくてやめた。途中で物事を諦めるのは彼女や親にもよく言われる悪い癖だが、もうかなりの強い性癖となっているのでなかなか抜けない。
「えっ!? いいんですが? ありがとうございます」
 彼女はぺこりと頭を下げた。俺も倣って頭を下げる。老夫婦は二人揃って、「どうぞ」と言い俺と彼女が座るのを許可した。それから彼女は老夫婦のレジャーシートに靴を脱いで座り、お弁当を開けた。俺も続いて靴を脱いで座る。
 彼女とどこかへピクニックしに行くとレジャーシートに座ることになるのだが、これには俺はなかなか慣れない。まるで地面に直に芝生の上に座っているような感じがするからだ。潔癖症な俺は芝生の上に座ってお尻に土や枯れた葉っぱのカスがつくのがとっても嫌。
 レジャーシートならお尻が汚れることはないが、分かっていてもダメなものはダメだ。レジャーシートに接しているズボンの部分にゴミがついていないかどうか1分に1回くらい確認する。潔癖症なのはわかっているはずだが、彼女は呆れたのかため息をついた。もちろんそんことを知らない老夫婦には不審な目で見られる。
「彼、潔癖症なんです。ズボンにゴミがついていないかどうか気になるみたいで」
 あまりにも不審な目で見られるので彼女が説明してくれた。彼女はちらっとこっちを向いて、その癖早く直してよね、みたいな目で見てきた。そんなこと言ったってこれは癖なんだ、仕方ないだろ。
 老夫婦は納得したように右の手の平に左手をグーにして当てた。ほー、とでも言いたそうな顔。多分分かってない。
「さて話はここまでにしておいて、ご飯にするぞ」
 理解してるしてない以前にスルーされた。なんだか少し悲しくなった。彼女の方もさっきとは違う呆れ方でため息をついた。ため息を1回つくと幸せが1つ逃げていくらしいという先人の知恵を教えてあげたい。
 彼女はお弁当の蓋を開けた。「じゃーん」という効果音つきで。そして俺の顔を見てにっこりと笑う。どう? 美味しそうでしょ。と目で言っている。
 俺はお弁当の中の具材でもっともポピュラーともいえる唐揚げをひとつ箸で取り、口へ運んだ。冷凍食品なのは見て分かったがあえて言わないことにする。彼女は確か料理が苦手なはずだ。
 しかし冷凍食品ということは普通に調理すればまぁまぁな仕上がりになるので味はそれなりによかった。お昼をちょっと過ぎてる時間というのもあり、お腹がすいていたのでおいしく感じる。彼女は俺の食いっぷりを見てさらに笑顔になる。どうやら俺が美味しそうに食べるので満足したらしい。彼女も箸で唐揚げをつっつき始めた。
「ん~、我ながらおいしー」
 唐揚げを口に入れて咀嚼している彼女が言った。冷凍食品じゃないの? と聞きたくなるが命が惜しいので言わない。でも確かにおいしかった。
 彼女は本当においしそうな顔で食べる。彼女は表情が顔に出やすいタイプで、怒るときは凄い形相で怒るし、嬉しいときは素直に笑う。だから表情を見てればどんなことを思っているのかがすぐに分かる。
 なので美味しそうに食べる彼女の顔を見た老夫婦のおばあさんの方に、
「お嬢ちゃん、おいしそうに食べるねー」
 なんて言われてる。
「そうですかー? だってこの唐揚げ美味しいので」
「お嬢ちゃんが作ったのかい?」
「そーですよ」嘘だ。
 おばあさんはその言葉にまんまと騙され、「お嬢ちゃん料理上手ねー」と言われた。あまりに素直すぎるおばあさんを俺は同情した。詐欺とかにすぐ遭いそう。気をつけて、と言いたい。
 彼女はそれ以上会話を続けず、熱心に食事に勤しんでいる。どうやらお腹がすいていたらしい。きっと朝、慣れないお弁当に時間がかかって朝食を食べる暇がなかったに違いない。それに比べ俺はレジャーシートを持ってくるだけなので、何となく彼女に悪い。今度何かおごってあげないと。
 それにしても長閑なお昼だった。風は適度に吹いていて、4月の気候としては少し寒く感じるが、桜の花びらが風によって舞い散っていてどこか風流。それに対して俺はこの膨大な花弁はどこへ消え去るのか、ととてもじゃないが風流ではないことを考えていた。
 彼女は何を思っているんだろう。今日桜の咲いている公園に行こう、と俺を誘ってくれた彼女は。何を思って誘ってくれたんだろう。
 その旨を彼女に伝えると、彼女は食べる手を止めて、あははと笑った。
「そんなの決まってるじゃない。綺麗な景色で彼氏と過ごしたいからだよ」
 なんとまぁ単純な理由だった。思ったことをすぐに行動する彼女にとってみたら桜の公園は俺と居られる大切な時間、それ以上でそれ以下でもないのだろう。いつでも呼んでくれれば俺からでも会いに行くのに。彼女は会うために何か理由が欲しいらしい。まるでなぜその時俺と会ったのかを記憶にとどめておくように。
 別に近い将来死ぬ予定とかあるわけじゃあるまいし、そんなことしなくてもいつでも会えるのに。彼女はその日、1日1日を大切にする人なんだな、と思った。
 思い出を大事にするということは過去を大事にして、未来はあまり考えない前向きな人なのかもしれない。そんなことないかもしれないが、例え目の前が火の海になったとしても、ポジティブに行動できる。良く言ったら前向き、悪く言ったら能天気。
 確かに彼女は前向きで能天気だ。昔からそうだったし、今もそうだろう。でもそんな彼女を俺は好きなった。それが彼女の一番の欠点であり、一番の利点でもある。そこがとても愛おしく思える。
 彼女は俺のことをどう思ってるのだろう。付き合ってるんだから嫌いなわけはないと思うが、ホントのところどうなのかを知りたい。好きと思っているのか。彼女の口から好きを言われたことはないのだ。だからホントのことを知りたい。
「じゃあわしらはここを離れるわい。後は好きにやっとくれ」
 そう老夫婦のおじいさんの方が言い、老夫婦は足早にこの場所を去っていった。俺が彼女に聞きたいことがあるので他人の老夫婦が聞いているのは虫の居所が悪い。だからそれを察してくれたのかもしれない。少し老夫婦に感謝した。俺は彼女に話をするため口を開こうとすると、
「ねぇ、玲君。聞いてほしいことがあるの」
 と、彼女が口を開いた。俺は言い損ねて口をぱくぱくしていた。彼女は少し笑顔になる。
 彼女が明るいギャグでも言いだすのかと思っていた俺は次に彼女が言った言葉に驚愕した。それは全く予想だに出来ない言葉だった。
「私死ぬんだ。それはもうほとんど決まってるの」
 一瞬彼女が何を言ったのか分からなかった。何回か彼女の言った言葉を頭の中でリフレインさせてようやく言った意味が分かったが、それと同時に頭の中が真っ白になった。
 えっ……、何だって……?
「私死ぬの、ホントよ。心臓病で心臓が悪くて、余命は2か月。だからもっと玲君と遊びたいの」
 再び彼女は笑って言った。どれだけ現実を受け止めれば、どれだけ前向きになれば近い将来死ぬということを笑って言えるのだろう。少なくとも俺には無理だ。俺はそんな現実を受け止める力はないし、そんな前向きにもなれない。
 だから彼女が笑って自分が死ぬということを言えるのは俺からしてみたら異常だった。俺にはまだやり残したことがあるし、やりたくこともたくさんある。まだ死にたくない。
 なのに、なのに彼女は……。もう死ぬということを受け止めているようだった。
 もっとも彼女が言ったことが嘘だということもある。だけど彼女はこんなブラックジョークを言うような人ではないし、人を楽しませる嘘を言っても困らせるような嘘を言うことはない。だから彼女が言ったことが本当だと確信したくはないが確信してしまった。
 余命は2か月。本来なら後60年ほどは生きられるのに、それに比べると2カ月という数字は極めて短い。たった2か月、たった2か月で彼女がこの世からいなくなってしまうなんて。
 彼女をこんな風にした神さまというものがいるなら、なぜ彼女なんだと聞きたい。彼女を少しでもいいから長生きさせることはできないのか。いや、彼女の代わりに俺がなることはできないのか、と。
「玲君、一緒にいてくれるよね?」
 彼女は笑った顔をやめ、寂しそうな顔で聞いてきた。まるでその顔には俺に拒否されたらどうしよう、ということとまだ生きたいという2つの彼女の思いが現れているようだった。
「ああ、ずっと一緒にいてやる。10年後も20年後も、その先もずっとだ。だから死ぬな、莉奈」
 思わず彼女を抱きしめた。強く、強く、強く。彼女の存在を確かめるように。彼女はまだ死んでない、ここにいる。
「玲君、だーいすき」
「俺も好きだ」
 初めて彼女から聞いた「好き」の二文字がこんなに重いものとは思わなかった。たった二文字なのにどんな物よりも重く感じる。
 俺はいつまでも彼女を抱きしめていた。



最初完成させたときはこれはうまい、と思ったんですが、時間がたっていくうちにいろいろちょっとおかしくない?
みたいに思い始めました。
例えば老夫婦、重い心臓病なのに外を出歩いていいのか、とか。
まぁ変なところはいっぱいありますが、おおめにみてやってください。

「私死ぬんだ。それはもうほとんど決まってるの」
の部分は、『半分の月がのぼる空』の一節からとりました。
まんまですwww

「俺」の最初のセリフは自分で考えたもので、かなり気に行ってます。かっこいいと思います、こんなことが言えたら。

この文書き終えるのに1時間ちょっと使いました。
がんばったと自分を褒めてやりたいです。

では。
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(・ω・)

おぉ、死ネタとかキミにしては珍しくないか?
一時間ちょっとでアレ書いたのか。よし、俺が褒めてやろう、よく頑張った!

色々と突っ込みどころがありそうだと思ってしまった俺は多分穢れている。
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プロフィール

白石歌香

Author:白石歌香
こんにちわ 大学1年生の 
白石歌香 っていいます。
もちろん半値です。中身は男ですー。

半値の由来は誕生石と自分の名前です。

杏エヴァン1位目指して奮闘中。

めいぽでは 現在ヨゼリア っていうキャラ使ってます。
でも未だにヨゼリアって名前に慣れないっていう。
呼ぶときはリカイナ、でお願いします。

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